物憂げな6月の雨にうたえば
6月1日
そうだ!西武のって秩父行っちゃおう!!!!
緊急事態宣言が撤回されたものの、まだ人が少ない新宿の飲み屋でコブクロ刺しをつまみアセロラハイを飲みながらハイになった私は決めた。
新宿西口の昔ながらの飲み屋街にあるこの店は、私が自分へのご褒美用に訪れることがおおいお店。普段であればもっと多くの人がいて、最近は日本語が通じない方や女子会の女の子もごちゃごちゃのカウンターに押し込められてワイワイした雰囲気の中でお酒を楽しむ店であるが、今日は私を含めてお客様は7人。普段店員も5人はいるのに、今日は2人だけ。「密」の塊みたいな店なので、とても影響を受けているのだと思う。三密になりそうだったらその前にお店を出るかと思っていたが、その心配は無かったようだ。また隙をみたら応援に行こう。
尤も、今は緊急事態宣言明けが宣告されて最初の月曜日。平日。
時刻は午後4時20分くらい。流石に平日のこの時間からお客様は少ないと思う。
東京の特に日雇い労働者にとってもこのコロナは過酷なのか、新宿駅の小田急デパートの前にいるホームレスの数はとても多いような気がした。ここのところ電車で新宿にくる事は少なかったので、昔から多かったのかもしれないけれど。
非常事態宣言が一旦撤回されたものの気分も余り晴れない。
天気も心を反映しているのか冷たい雨。夕方の時間を使って逃げるように人と人、路線と路線の結節点である新宿に向かう。埼京線を降りて、西口に向かう通路に向かう。
私はよく人にぶつかる。
意見とか態度を巡ってぶつかることもおおいのだけど、それと同時に東京みたいな人が多い町に行くと物理的にも人にぶつかる。なるべくぶつかるのを避けて、ひょいひょい動こうとするのだけど、なかなか。
でも、今日は人とぶつからなかったし、むしろ皆密にならないように意識しながら動いている感じだった。でも、カップルとかは堂々と近くに並んで歩けていていいなぁ、とおもった。私もなるべく人には近づかないようにして紀伊國屋書店で必要なものを購入して、気になった喫茶店がアンテナに反応するが換気が悪そうなので避けて、飲み屋に行って、そのあと2件目で食べた水餃子がとても美味しかった。
西武新宿駅について、特急の路線図を見る。
残念なことに新宿線の特急はどうやら秩父には行かないみたいだ。
まぁ秩父に行ってもあとあと困るしね。
じゃあ八高線に乗ろう。
とりあえず、午後5時に川越市行きの特急があるらしいので切符を買い、景色と読書を往復する旅に出る。
約一時間で本川越へ。川越には用がないのと、西武の駅とJRの駅と東武の駅はそれぞれ離れていて、一番近い駅は東武の川越市駅らしい。美味しそうな焼き鳥を売っているお店を横目に、川越市駅へ。
横に元町・中華街行きの電車が止まっているが、森林公園行きの電車に飛び乗る。
森林公園は、小川町の数駅手前。母方の祖父が昔武蔵嵐山に住んでいたという話を聞いていたので、どんなところなのだろう?という疑問があったのだけれど、この電車に乗っていてはその手前で終点を迎えてしまう。次の急行が小川町行きだそうだけど、坂戸で越生(おごせ)線に乗り換えて、越生から八高線に乗ることに決める。
私の中では八高北線は最優秀近郊読書の旅向き路線である。つまり、景色には何もない。電車ではなくキハと言われるディーゼル車が走っているので、たまにエンジンの回転を止めてカタンカタンとレールを鳴らす音だけが車内に響き渡る瞬間がある。とても快適な瞬間。
余談だが、関東一円大回りの旅といった、特定運賃区間制度を利用した移動の方法がある。読書の旅と称した読書時間でよく使う手段で、そのなかでも両毛線と八高線はなるべく目指したいと思うが、そこに至るまでの路線がなかなか苦行であったりする。
車やバイクに乗るようになってから、移動中に本を読むことがまったくなくなった。電車にそこまで乗らなくなったから。自分で運転するのもそれは楽しいし、思索の旅にもなるのだけど、本を読む時間というのもかけがえのないものなので悩ましい。
小川町を過ぎ、寄居を過ぎて日が完全に沈むと、景色は真っ暗。
途中停車駅の無人駅の改札の彼方も漆黒の闇。逆に闇の中からこのディーゼル車をみたら、結構映えるんだろうな、とか、銀河鉄道などはこんな感じなのかな、とボーッと考える。あくまで本を読みながら。結構重い本を読み終わり、次の本に目を移す。
午後8時22分、高崎駅に到着。
両毛線にのって岩舟とおって小山にでて、そこから宇都宮線で帰ればいいな。時間あるかな。と思っていたら、30分後に出る上野東京ラインの熱海行きが終電であることを知る。流石に1時間かけて小山に出てる余裕がない。下手したら新幹線ももうない。
はぁ帰らんといかんのか、と暗い気持ちになる。こともなく隣のホームにとまっている水上いきの電車を眺めながら、水上いきたいな、水上ついたら2駅行けば湯桧曽・土合とトンネル駅が続く面白いところにつくし、特に土合駅の地上ホームから星を見たら絶対綺麗でしょ!!なんてのんきな事を考える。というか、居酒屋のお酒が質悪すぎて頭痛いし、土合なんて行った日には帰れへん。
土合といえば大学の頃に院生のTAと一緒に遊びに行った。
その時は猛吹雪の日で、ちょっと死にかけたりしたな、今何されてるんだろう、と思い出しつつ、その延長で大学時代仲良かった同級生が高崎に住んでいたことを思い出た。
数年ぶりに声をかけようか、などと考えるけれど、最後にあったときの経緯とか、YOUは何しに高崎に?と考えると、何しにだ!と思う。
本当はもっとじっくりこの町を歩いてみたい。いつも一瞬だ。
人も街も時間も。
駅前のホテルを恨めしく眺めながら、「コロナが収まったらまたこよう」と胸に秘め、熱海行きに乗り込んだ。
翌日、東京での感染者が急増し、その次の日には東京アラートが発動された。
そして私は体調を少しだけ崩した。